犬猫の歯の破折ついて
当院では年間に約30例の修復治療を行っています。
歯が折れてしまったときに飼い主様にまず理解していただきたいことがあります。以下のページを参考にして下さい。
犬や猫の場合、歯が折れてからそれなりに時間が経過していることが多く、根管治療と歯冠修復の組み合わせで治療することが多いです。ここでは、根管治療と歯冠修復とはどんな治療なのか、当院の方式、実際の治療例を紹介します。
基本的に犬と猫の歯科治療は麻酔が必要であり、“治療のやり直し”という結果は “複数回の麻酔” という結果につながるため、一回で最高の結果を出す質の高い治療が必要です。治療の質が悪くて痛みがとれなければ当然歯ブラシの質に影響しますし、段差やデコボコのある修復治療で歯石がたまりやすくなり歯周炎になれば、歯ブラシを嫌がるようになって歯石が再付着し、結局歯を失うことにもなります。つまり治療の質が、その後のメンテナンスに大きく影響するのです。多くの飼い主様は、“その時治ればよい”と考えていらっしゃいますが、実際はもっと繊細です。
当院では、修復治療後に歯ブラシができなかったり、すぐ歯石が付いてしまう問題の多くは、飼い主様のケアの問題ではなく、獣医師の歯科治療の質や歯ブラシ指導のやり方にあると考え、真摯に治療に向き合いたいと考えています。
当院のホームページの症例紹介の写真は、数か月から数年の経過で紹介されています。このような長期的視点に立った治療方針も同時に感じていただきたいです。
根管治療
根管治療とは、感染したり炎症を起こした回復不可能な歯髄(神経と血管)を完全に除去してから繰り返し消毒し、その後の再感染を防ぐために詰め物をする治療法のことです。
根管治療の質は、歯の寿命や症状の改善に大きく影響します。感染した歯髄を完全に除去することは容易ではありません。治療が終わったと思っても実は充分な治療ができておらず、人の歯科医師でさえ、数年後に再発してしまい治療を繰り返したり抜歯に至ることもまれではありません。(国内の歯科医院で成功率60-80%というデータもあります)
マイクロスコープによる精密治療
肉眼や通常の拡大鏡では目視が不可能なレベルの精密治療が可能。
術者の経験と勘頼みの手探りの治療が、マイクロスコープを使うことで、目で確実に見ながら行う治療ができます。
CWCT法による根管充填
根管充填とは、削って消毒した根管に隙間なく詰め物をする処置のことです。
CWCT法は、垂直加圧充填法の一つです。米国の人の歯科専門医の約半数に取り入れられている方法でもありますが、使いこなすには知識と経験が必要です。
歯冠修復
歯冠修復とは、折れたり欠けた歯に被せ物などで修復することです。
当院の歯冠修復の特徴
マイクロスコープによる精密治療
高精度で治療することは、ただ “美しく治療できる”というだけではありません。
・接着前の歯面の汚れが確実に除去でき、修復が長持ちする
・不必要に歯を削らなくてすむ
・段差や凸凹のない修復が可能で、修復後も汚れが付きにくく、ケアしやすい
難症例にも対応
歯の折れた割れ目が歯肉の中にまで及んでいる場合、歯冠歯根破折と呼ばれ、仮に修復したとしても歯周炎が必発するため要注意です。そのため、抜歯が最善の治療法になる場合もあります。当院ではそのような難症例に対しても数多くの治療を手掛け、長期保存の実績も残してきました(症例「4歳の柴犬」を参照)。歯冠歯根破折の治療は当院の最も得意とするところです。
症例
2歳のミニチュアダックス
治療前
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右第四前臼歯の歯冠歯根破折の難症例。基本的に抜歯が選択されるのが一般的。従来の方法では仮に修復したとしても数か月で歯周炎になるため、歯ブラシや歯石取りに相当な手間がかかることが予想される。
治療後
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当院の強みを生かした保存修復。
治療後1年
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歯ブラシをしていても嫌がらず、出血することもない。健康な歯ぐきの色に注目。
4歳の柴犬
治療前
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左と右の上顎第四前臼歯が共に折れている。右は歯冠破折、左は露髄を伴う歯冠歯根破折で難易度が高い症例。
治療直後
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マイクロスコープ導入前で、拡大鏡による初期の治療のため、歯冠形成の仕上げにやや問題はあるが、それ以外の処置の精度に問題はない。
治療後2年
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