院長ブログ
猫の口内炎について
口内炎は猫のみならず、私たちもなることがありますよね。経験のある方も多いのではないでしょうか。 ただし、猫の口内炎は私たちには想像できないほど重症化し、そのような場合猫のQOL(生活の質)は深刻なほどに悪化してしまいます。例えば、以下のような例です。
- 痛くて常によだれを垂らしている
- 水が飲めずに脱水と腎機能の低下(当院の猫の例で、治療前にBUNが180を超えていた例もあります。治療後に腎臓病はstage1に回復)
- 著しい体重の減少
- 腎臓病などの持病の悪化
多くの飼い主様は、自分が理解できない病気であるがために何をしたらいいかわからず、とりあえずステロイドや抗生剤で当座の痛みをしのぐ選択をされます。(それ自体は問題ありません。) それで多くの猫は一時的にとても楽になるはずです。
ただ、そこで問題は、このような治療をしても緩和しているにすぎず口内炎は治った訳ではないということを理解する必要があります。つまり、数週間すればまた同じ状態になってしまいます。
口内炎の原因には様々なものが考えられていますが、(「猫の口内炎」のページを参照)未だわからないことが多い病気です。そんな中で最も確実に根治を目指せる治療として “抜歯”という治療があります。
“抜歯”という治療の選択をする飼い主様の心の負担は相当なものであるということは想像できます。ただ、私(獣医師)は、抜歯をすることで以下のような効果を日々実感しており、多くの方に早く適切な決断をしてもらいたい、家族の決断のサポートをしたいと感じています。
- 毎日の口の痛みから早期に完全に開放される(表情も劇的に改善することもしばしば)
- 体重や腎機能の急速な回復 → 結果的に寿命も延びます!
- 将来の通院やステロイド注射からの解放。
- ステロイドに頼らずに早期に抜歯すればするほど根治の可能性も高くなることが研究でわかっています。
- 余計な出費を抑えられる(早期に抜歯をするのであれば、それまでの緩和的なステロイドの使用は不要)
- 痛みによる脱水や全身状態の悪化が最小限であるため、麻酔リスクも抑えられる
下の写真を見てください。歯はなくなってしまったかもしれませんが、口が痛くなくなったことは理解していただけるのではないでしょうか?
抜歯処置をする上で、私(院長)が大切にしていること。
- 口内炎の病変の場所やその程度の記録を処置の前後でしっかりとっている。 (治療後の評価は、獣医師はどうしても甘い評価をしがちになります。それを客観的に評価することで処置後の質の高い内科管理に生かすことができます。)
- 拡大鏡を使った迅速で精度の高い抜歯処置
- 抜歯後に残根がないかレントゲンで確認している
- 見落としのない心疾患や腎疾患などの内科的管理と、それを生かした麻酔モニター
- 麻薬系の薬を用いた十分な鎮痛処置
- 処置前の内科管理から抜歯後の術後ケアまで一貫して同じ獣医師が受け持ち、その結果に責任を負う
治療前
治療後